シンデレラなんて、勝手にふるえてろ

『おっさんずラブ』を観る前、私はこのドラマにモヤモヤとした気持ちを抱いていた。

2016年末のスペシャルドラマが『年の瀬"変"愛ドラマ』というコンセプトで放送されていたこともあって、「同性愛を"変な愛"として茶化してるんだろうな」と思っていたからだ。

PRのかんじから『吉田鋼太郎がヒロインってウケるよね』みたいなノリがあるんじゃないかなとも思ってた。

 


だから、今回の連続ドラマも観るつもりはなかった。

大好きな『隣の家族は青く見える』で不器用だけど優しくてかっこいい「わたるん」を演じていた眞島秀和さんが出るのも、複雑な気持ちだった。

同性愛がテーマにあるからって「またこういう役なんだ〜」とひとくくりにされるのが嫌だった。


と、こんなに頑なな一方で、友達のツイートや流れてくるいいねで観た林遣都くんの姿がどうしても気になってもいた。

カッコいいしなんて切なくて美しい表情をするんだ林遣都。勘弁して。

そうしてうっかり観た2話。

我ながら全然本能に抗えてない。

でも、抗わなくて正解だった。回を重ねるごとに、このドラマがただのコメディじゃなくてちゃんと「恋愛ドラマ」だなって思うようになったからだ。


正直、部長の愛情表現は受け入れがたかった。

営業日誌を使ってメッセージ送るなんて公私混同しまくりだし、隙あらば春田くんに触ろうとするのも「セクハラじゃん」としか思えなくて全然笑えなかった。

妻の蝶子さんの存在とか、2話を観終わるころにはもはや完全に牧くん派になってしまったこともあって、部長を応援する気になれなかったんだけど・・・。

 

牧とのバトルで悪いところを挙げられなかったところや、出てきたセリフが「はるたんそんなんじゃねえよ!」なところからして、「部長にとって"はるたん"は王子様みたいなものなんだな」って思うようになった。


このかんじ、どっかで見たことあるなと思ったら『勝手にふるえてろ』の主人公・ヨシカから憧れの男の子・イチへの感情に恐ろしく似ている。

好きになった相手に対して妄想がふくらんで、その人自身を見つめられなくなっちゃうかんじ。

勝手に王子様のようなステキな人だと、自分の理想の相手を作り上げてしまう。10年という長い片想い期間も手伝って、2人ともかなりこじらせている。

 

黒澤部長やヨシカのような恋ってイタい、と思う一方で、わたし自身も「舞い上がって相手を見失う」というタイプ。

まあ手作り弁当を押しつけたりはしないけど(笑)ちょっとしたことを都合よく解釈しちゃうとか、めちゃくちゃ分かる・・・。

 

そして、相手のことをちゃんと見れていない「好き」は、相手に「モテてる」と思わせることは出来ても好きになってもらうのは難しい。

だから部長は(少なくとも現時点では)牧に敵わないんだよね。

ダメなところ10個挙げて、服ダサいだのモテないだの言いながらも、「本気で好き」って言えちゃう牧くんの春田に対する愛情の前で、「春田創一」を知らない部長は無力だ。語彙力を失うしかない。オタクかよ。分かりすぎてつらい。

 

分かるからこそ、部長には自分をシンデレラにした「はるたん」じゃなくて「春田創一」と向き合ったうえで前に進んでほしいなあと思っている。いつまでも苦しい恋をするんじゃなくて。

「登場人物みんな幸せになるエンドが好き」とプロデューサーさんがおっしゃっているのを読んだので、期待しています・・・。