現在、天王洲・銀河劇場で上演されている「ちびまる子ちゃん THE STAGE 『はいすくーるでいず』」、通称「まるステ」。
出演者のファンのみならず、この情報を目にした人々をざわつかせていた本作。発表当初は配役も伏せられており、何かと謎の多い作品だった。
かくいう私も、当初「ちびまる子ちゃんの舞台ってどういうこと?」と興味半分、不安半分の気持ちでいた。舞台ちびまる子ちゃんと銘打っているにもかかわらず、どうやらまるちゃんは出ないらしいと分かり、なおさら謎は深まるばかり。
配役およびメインビジュアルを見ても想像がつかず、あらすじが明かされて少しだけ想像がついたかと思いきや、2幕がまるまるショータイムだと聞いてまた混乱し……という具合。
そして迎えた初日。どんな作品になっているのか早く観たいというワクワクした気持ちと、友人に同行してもらうことになっていたため「大コケだったらどうしよう」という大変失礼な不安を胸に配信を観た。
まるステで描かれるのは、『ちびまる子ちゃん』の世界から8年が経ち、高校2年生になった男子たちの「もしも」のお話。
高校3年生を目前にして将来に悩み始めた彼らのもとへ、東京へ転校していた大野くんがバリバリのヤンキー姿で現れるところから物語は始まる。
パラレルワールドなので、元3年4組の彼らはなぜか全員同じ男子高校に進学しており、エリートなはずの花輪くんや丸尾くんと宿題もやってこないはまじがなぜか同じクラスで授業を受けている。
そもそも、みんなやたらイケメンに成長しており、小杉くんに関しては面影がまったくない。(ご飯大好きなのは変わっていない模様)
しかし、口調や声質、仕草や立ち方など、ひとりひとりがアニメで見てきた彼らの姿と結びつき、全くの別物ではなく、あくまで「まるちゃんのパラレルワールド」なんだなと納得できてしまう。原作漫画やアニメをよくよく研究されているんだろうなあと感嘆してしまった。特に、佐川大樹さん演じる丸尾くんは、声を聞いて「あの丸尾くんだ!」と感動してしまったほど。
作中のダンスもそのキャラらしい個性に溢れていて、観ていて楽しい。
お芝居の予算の半分を使ってしまったというド派手なオープニングに始まり、描かれるのは笑いあり、友情あり、ケンカもちょっとありな彼らの日常。
本編が終わり、「これ、何回でも見れるやつだ……………」と確信したわたしは別日のチケットを買い足していた。すでに5公演観に行くことが決まっていたにもかかわらず。
わたしはこの作品の楽しさに、すっかり虜になった。
まるステの舞台は昭和50年代。テレビやラジオが一般家庭の娯楽として愛されていた時代であり、作中でもそれらが彼らにとって大きな存在なのだろうと感じるシーンがたびたびある。
1990年代に生まれたわたしにとって、長らく最大の娯楽はテレビだった。
歌番組でさまざまな時代の音楽を知り、嫌なことがあった日はお笑い番組に救われ、ドラマに出てくるかっこいいお兄さんにときめいたり。
私が小中学生だった頃、まだまだテレビは話題の中心にあり、作中の彼らほどではないにしろ、わたしたちを繋いでくれるものだった。だからこそ、やんちゃな子もガリ勉も、明るい子も暗い子も同じ話題で盛り上がれる彼らの関係性が、いっそう素敵に感じられるのかもしれない。
どこにでもいる大人になってしまったわたしには、夢を笑わず応援し合う彼らはあまりにも眩しいけれど、見終えたあと、なんだかエネルギーを分けてもらったような気持ちになれる。
と、まじめなことばかり語ってしまったが、本編にはくすくす、時には声を上げて笑ってしまうようなシーンがいくつもある。
ちょっとしたアドリブやトラブルさえも楽しめてしまうのは、映像にはない、舞台の醍醐味だなあと思う。
悪役なのに憎めないかわいげのあるオリジナルキャラクターの不良たちが随所で良い味を出しているので、ぜひ彼らにも注目してほしい。
そして、まるステがわたしの心を掴んで離さなかったもうひとつの要因が、2幕のまるステ ザ 歌謡ショーである。
当時から色褪せぬ魅力を持つ昭和歌謡。ほとんどが平成生まれなキャストによるパフォーマンス。歌やダンスのみならず、生演奏も。クリスマスソングメドレーもあり、この季節にぴったりのぎゅっと魅力の詰まった濃い時間だ。
現地でフラッグペンライトやうちわ(!)を持って見る楽しさは、まるで当時の歌番組の観覧に来たかのようで、格別である。
そんなまるステ、最終日の12月25日(日)は、昼公演・夜公演ともにStreaming+での配信が決定している。
あたたかい気持ちになれること間違いなし!なのでおすすめです。
https://chibimaruko-stage.com/streaming/